こんにちは。企業研修講師の竹内豊です。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大による緊急事態宣言が全国に発令されています。多くのいのちの安全が守られることを最優先とし、私たちそれぞれが、それぞれの置かれた場で協力をしています。
この状況の中、各企業で緊急的に発生しているクレーム応対の負荷、またそれへの対策について、ご一緒に考えていきましょう。
コロナ禍の中、市民生活の各所に多大な影響が及んでいます。品薄・品切れによる不便一つにしても、今や多くの生活者にとって身近なものになってしまいました。「マスクや食料品など必要なものがお店で買えない」という状況を、私たちの多くが身をもって、この短期間で経験しています。
「非常時だから仕方ない」「我慢しなければ」「皆で譲り合い助け合って」といったように、寛容・慈善的な姿勢を持ち、自制心を保ち、もやもやした気持ちを抱えつつも冷静な行動をとる消費者が多いことは確かです。しかし一方では、消費者の「普段在庫が整っている商品がない」「今度いつ入手できるか分からない」という不満・焦燥・苛立ちから、クレームがここかしこで増えていることも報じられています。
激しい怒りを店員に向けるケース(ハードクレーム)もあります。クレームの矢面に立たされている店員のストレスは大変大きいことでしょう。コロナ危機の今、こういった類のクレームが、小売店で働く多くのスタッフを疲弊させています。
コロナパンデミックに端を発するクレームは主に小売店での「品薄・品切れ」だけにとどまりません。各企業(店舗)の営業一部自粛や完全自粛、サービス提供範囲の限定など、利用客にとって不便であるさまざまな要素がクレームの種となり得ます。
各企業のサービス・商品そのものに対する不満とは直接的に関わりない部分で、「感染したらどうしよう」「感染拡大が終息しなかったら社会はどうなるんだろうか」「生活はどうなるのか」「雇用が心配だ」といった社会不安が高まっている大衆心理も、背景には関係していることが考えられます。
この非常時、通常業務の遂行が困難になっている企業の現場ではあっても、顧客から発生するクレームにその都度適切に応対することができれば何よりです。が、平常時であっても高いコミュニケーションスキルが発揮されるべき「クレーム応対」を、今、限られた資源(時間・人財等)の中で行なっていくことは、応対者にとっても現場にとっても非常に負荷が大きいことです。
研修機会が難しければ教材活用なども視野に入れ、各企業内でスタッフに対し、ポイントを絞ったスキルの落とし込みを行なっていただきたいと願っています。
クレーム応対のゴールとは何でしょうか。一言で言うと、「『わざわざクレームを言って良かった』とお客さまご自身が感じてくださること」です。
もちろん、何から何までお客さまのご要望通りに叶えて差し上げることはできないため、「不可能なことは不可能」と伝え、ご理解いただく必要があります。が、たとえご要望通りの形が叶わなかったとしても、「不満を申し出て良かった」「このスタッフは真剣に私に向き合ってくれた」「この人に応対してもらえてよかった」「この会社(店)は信頼できる」とお客さまが感じてくださることが、クレームが収束に向かうための鍵です。以後の継続的ご利用を促す要因ともなり得ます。逆に、お客さまに不満が残り続けるクレーム応対は、一見その場はやり過ごせたように見えても、後になって二次クレームやマイナス風評等を生む可能性があります。
スタッフがクレーム応対のスキルを身に付けるための研修(クレーム応対研修)は、コロナ禍にあるかどうかに関わらず元々各企業でニーズが高く、顧客コミュニケーション全般の研修の中で重要な位置づけにあります。講師として多くの企業の皆さまと接している私ですが、業界・業種を問わず非常に高い確率で受講者さまに共通する傾向として、言えることがあります。それは、「お客さまを受けとめるスキル」の不足です。
ここで言う「受けとめ」とは、「あなたの立場・状況・心情を私はしっかり受容している・共感している」というスタッフの姿勢を、お客さまに対ししっかりと、言葉や態度で表現して伝えることを指します。この「受けとめ」なくして、クレーム応対の成功はあり得ません。「正しい知識のもと正しく説明すること」「誤りなく回答すること」「情報の穴を埋めるための質問ができること」「解決につながる提案ができること」も非常に重要なのですが、それらと同じレベルで、いや、それらに先立って、「受けとめを示すこと」が、クレーム応対のためには不可欠なのです。「受けとめ」の有無が、「迅速優先のクレーム処理」と「誠実なクレーム応対(心に心で応えること)」との決定的な差を生みます。
実は、「説明」「回答」「質問」「提案」については、応対者個々の知識・スキルが仮に少々不足していたとしても、マニュアルやFAQ(お客さまから言われることを想定した回答集)を現場で整備しておくことにより、応対で活用することが可能です。例えば、お客さまが以下のような言葉(クレーム)をおっしゃったとします。
「まだ入荷しないの? いい加減にしてよ! 何回も朝早くから来てるのよ、ここに!
いつ入るの? 次、いつまたここに来ればいいの? ちゃんと答えなさいよ!!」
上記に例示したお客さまのお怒りに対し、応対者がどのように説明すべきか、何を確認すべきかは、マニュアルやFAQ、或いは店舗内で都度アップデートされるルールの範囲で、ある程度定めておくことができるでしょう。「ベテランだからスラスラ説明できる」「新人だから応対できない」ということがなく(つまり応対者によって内容にばらつきが生まれず)、一定の応対品質を保った会話ができるようにするために、ルール化・マニュアル化は非常に大切です。
しかし、ただ正しく説明されるだけではいかにも機械的・事務的で、お客さまは「自分のことを本当に分かってくれた・寄り添ってくれた」とは感じてくださいません。「丁寧に説明しているのにお客さまが納得してくれない」という原因は、ここにあります。説明・回答に先立って、「受けとめ」を示さなければならないのです。
「受けとめ」は、お客さまのご様子をその都度よく観察し、話される一言一言を細やかに傾聴して分析し、自分の理解力や感性をもって咀嚼し、最終的に自分自身の言葉を使って投げ返すというプロセスを通して、相手に伝わります。
例えば上記に例示したお客さまの架空の言葉に対しては、「次の入荷予定」を正しく説明することは無論大切なのです。が、それに先立って、「何回も足を運んでご来店くださっていること」「『いい加減にして!』と思うほどに苛立ちを感じていらっしゃること」「また来るのは面倒だと思っていらっしゃること」(→状況と心情)について、お客さまの身の上に立って応対者自身が理解し共感しているということを、真っ先に表現したいのです。多くの言葉を連ねる必要はありません。端的に「受けとめ」を示す一言を挿入するだけで、応対の流れは劇的に変わります。
お客さまも応対者も、単に文字情報を相互にやり取りする機械・ロボットではなく、感性を持っている人間同士です。人間だからこそくみ取れる想いを、想いで返すことによってこそ、「私は受けとめられた」と相手が感じ、心を開いてくださいます。お客さまが説明や提案を聞いてくださるための心の土壌を作れるかどうかは、応対者の会話スキルにかかっています。
さて、これらは画一的なマニュアル・台詞(スクリプト)・FAQではカバーしきれない領域です。応対者個々のスキルを発揮すべき領域です。よって、スキルを練習して落とし込むためのトレーニング(研修機会)が必要です。
お詫びのスキルも重要です。「申し訳ございません」という台詞を述べることは誰にでもできます。が、本当に申し訳なさが伝わる表現を工夫する必要があります。
「申し訳ございません」と言うことが大切なのではありません。大切なのは「何を言ったか」ではなく「何が伝わったか」です。伝わるスキルを応対者が発揮しきれないため、「謝ればいいってもんじゃないだろう!」「『申し訳ございません』しか言えないのか!」「『申し訳ございません』は聞き飽きた!」などとお客さまから言われてしまい、返す言葉もなく黙ってしまうという現象は、多くのクレーム応対現場で起こっています。
基本的なビジネスマナー研修などでよく、「謝罪のあいさつ」「お詫びの際のお辞儀」などが取り上げられることがあります。それは、お詫びの基本を学ぶ上で重要です。しかし、お客さまが今お怒りになっているという状況に対峙するリアルなクレーム応対現場では、基本のお詫びができるだけでは不十分です。お詫びの言葉をワンパターンにではなくバリエーション豊かに述べられるスキル、また動作や声も最大活用して表現できるスキルが、極めて重要です。
特にバリエーション豊かなお詫び表現については、応対者個々の語彙力が必要です。とは言え、語彙は元々自然に、応対者に備わっているものではありません。「無いものを引き出す」ことはできませんから、講師からの口頭伝授や教材による、語彙を知るための学習が必要です。
コロナ危機にあってもお客さまを失わず、かえって信頼を強めることのできるクレーム応対のスキルを、できるだけ早いスピードで身に付けることを目指しましょう。ここまで解説してきたことに基づき、具体的には
・「受けとめ」を示すための各種話法
・語彙(言葉のボキャブラリ)
・声や動作による表現法
・応対の流れ(始まりからクロージングまで)の把握
・説明、提案、質問の手法
上記を(特に3段目までを優先的に)応対者個々が身に付けられれば、クレーム応対は確実にスムーズに進みます。「受けとめ」を駆使してお客さまに寄り添い、深く、そして適切に謝罪し、必要に応じヒアリングを深めて解決策を提示・説明するという一連の応対を展開することにつながります。結果的に、応対者と現場の負荷を軽くすると共に、お客さまにご満足いただける姿が実現されることでしょう。
通常であればクレーム応対の基礎から応用まで、研修の場で、座学と実践練習を行うのが理想です。ただ、現在は緊急事態宣言が発令されている状況にあり、解除された後も恐らく「社会距離の維持」など慎重な感染対策を施すべき状況は続くことから、アイシービーでは、以下の学習スタイルをお勧めしています。
① 十分な感染対策のもとで研修が実施できるかどうかについて、クライアントさまと共に深く検討する
② リアルでの研修が難しい場合、リモート研修をご活用いただく
③ リモート研修も難しい場合、教材をご活用いただく
多くのサービス・販売業の企業さまでは、人員不足が深刻化する現状では上記①②共に難しいかもしれません。③に挙げた「教材の活用」は、アイシービーが過去、多数の企業さまに提供してきた実績を持つ分野です。テキストと効果測定(テスト)をセットとし、学習者それぞれがご自分のペースで取り組める内容です。教材は、そのまま社内で配布・展開いただけるPDFデータで提供させていただきます。(クライアント企業さまそれぞれの社内e-learningシステムの中に組み込み、ご活用いただいている事例もあります)
●「今まで『申し訳ございません』とひたすら謝ることしかできなかったのが課題だったが、教材によってクレーム応対の言い回しが一気に身についた」
●「応対の導き方を、会話の順を追って体系的に学ぶことができた」
と、ご好評をいただいています。
クレーム応対の方法(店舗などでの対面応対/電話やメールなどでの非対面応対)によっても、スキルのポイントは変わります。各社さまのご状況を担当コンサルタントが詳しく伺い、最適な方法を提案させていただきます。どうぞお気軽にご相談ください。
「なんで入荷しないんだ!」「いつまで待たせるんだ!」「不公平じゃないか!」「早くサービスを再開しろ!」「料金を返せ!」など通常でも起こり得るクレームが、何倍にも膨れ上がる勢いで発生しているのが、コロナ禍の昨今です。応対者にとって、もしかするとお客さまの主張は明らかに理不尽で筋が通っていないと思うケースもあることでしょう。
しかし同時に、社会全体が同じ事態に置かれている非常時だからこそ、発揮できるマインドがあります。これまでにはなかったかもしれない「深い共感」です。お客さまと同じ視点や価値観で、「実は私もあなたと同じ立場です」「あなたのお気持ちは同じ生活者として、人間として、よく分かります」という想いを抱けるのが、今なのです。
同じ血が通った人間同士だからこそ抱ける想い。これは「受けとめ」スキルの根本をなすマインドとして、絶対に欠くべからざるものです。アイシービーでは、単に「形ありき」「テクニックありき」「ハウツーありき」ではなく、お客さまに真に寄り添う心に根差した応対スキルをお伝えしています。研修内容に関し、どうぞお気軽に弊社コンサルタントまでお問合せください。
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