こんにちは。企業研修講師の竹内豊です。
私は各官公庁さまや企業さまでのさまざまな研修に伺い、講師・トレーナーとして受講者さまと関わる活動をしています。多くの受講者さまと出逢う中で、「実は研修(セミナー)の講師になりたいと思っている」という方にお会いする機会があります。そういった方々の中にはもちろん夢を果たして講師になるケースもあるのですが、「講師業」で息の長い活躍を続ける方もいらっしゃれば、「講師になる」という夢を一時的に果たしただけで諦める、または他職種に転身される方も存在するのが現実です。
「講師業」は、「人様に何かを伝える」「誰かの成長をサポートする」「企業組織の人財育成に寄与する」という役割があり、長く歩めば歩んだだけ実感できる実りも多く、「やっていて良かった」というやりがいを得られます。「講師になりたい」という想いをお持ちの方には、願望を願望のままで終わらせず、ステージの上に出てきてほしいと、心から願っています。このコラムでは「研修講師」、中でも「ビジネスマナーや接遇コミュニケーションで強みを発揮する講師になるには?」というテーマから、大切なポイントをご一緒に考えていきます。講師を目指す方の一助になれば嬉しく思います。
◆◆ 目次 ◆◆◆◆◆◆◆
- 1、今までの職務経験がいくらあっても講師にはなれない
- 2、講師には、共通の成果を達成するためのパートナーがいる
- 3、「やってダメならやめればいい」は本当?
- 4、「自信をもって演台で喋る」は講師の職能のほんの一部である
- 5、息の長い講師を目指して。アイシービーの講師養成講座で学べること
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1、今までの職務経験がいくらあっても講師にはなれない
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、従来からの働き方やキャリア形成、ひいては人生の歩み方について立ち止まって考え、「これまでの自分の仕事経験を活かして講師になりたい」と思われる方もいらっしゃると聞きます。例えば、サービス業従事者として活躍してきた経験、管理職としての経験、或いは新入社員や部下・後輩の育成を担当してきた経験を活かし、次なるビジョンとして「接遇などを教える研修の講師として活動したい」とお考えになるケースです。長年勤めてきた会社を辞めることも視野に、フリーランス、ひいては会社設立という形で独立をお考えの方もいらっしゃいます。人生の中では大きな決断、転機であることでしょう。
ここで、突然ストレートにお伝えしてしまうようなのですが、講師を志す前までの職務経験は「大変貴重な糧」ではあっても、それだけではプロの講師になることができません。
今まで携わってきた仕事の専門性がどんなに高かったとしても、複数の職種を経験してきていても、或いは、お勤めになってきた会社が社会的に広く知られているような有名企業であったとしても、です。
例えば、「接客のスペシャリストとして活躍して来た。後進の育成も行なってきた」という経歴にしても、それ自体は非常に尊いものです。少なくとも一朝一夕で片手間に生み出せた成果ではないことでしょう。何年にもわたる努力と成功体験の積み重ねがあり、実績があり、自信が生まれ、正攻法や持論が固まってきたはずです。
が、過去のお仕事で築き上げてきた経験値は、「自社の利益を上げるために最適化された職能」です。他社でも必ず通じる普遍的なものではありません。講師は、ただ一つのメソッドだけを正論とするのではなく、「講師としてお邪魔する企業(クライアントさま)それぞれに存在する課題、企業それぞれにふさわしい課題解決のあり方を、講師自身の思慮・思考を尽くして編み出す力」が、まず必要とされます。
「自分のスキルを活かして研修講師をやろう!」という考えだけで、前のめりで講師業を開業したものの、事業として成立するほどには仕事が来なかったという事例も、残念ながら多数あるのが事実です。その原因に、「私が前にいた会社では○○が正解でした」という考えに固執しすぎるということがあります。
ことビジネスマナーや接遇マナーは、「あるべき姿」が幾通りも存在する分野でもあります。各企業が、お客さまのご満足や時代のニーズに合わせて「守るべき部分」と「変化させるべき部分」を選別・精査しながら継承していくものでもありますから、「一つのやり方」だけに固執すると、ただの教条主義に陥ってしまいます。幅広い知見と柔軟性を兼ね備えた講師として、さまざまな業種・職種の方と関わっていくために、「自分が過去活躍して成果を上げてきたやり方が今後も通じる」という誤った認識は、一番に退けたいものです。
2、講師には、共通の成果を達成するためのパートナーがいる
「講師業」と聞くとまるで講師一人が研修の一切合切すべてを担うように思われるかもしれません。が、研修は一人だけでやる仕事ではありません。研修プロジェクトには大きく分けても次のような区分があります。
①~⑥の中で、講師が講師である核たる部分(或いは最低限持っているべきスキル領域)は④です。それ以外の部分は、それぞれ専門的スキルを持ったスタッフが担うのが基本です。つまり、「講師である自分一人で全部を背負わなければ」と、必要以上にハードルを上げる必要はないということです。
研修の実施は、運営に携わる複数のプロ担当者同士が相乗的にスキルを発揮して成立する“チームワーク”です。①②⑤⑥についてはコンサルティングスキル(営業スキル・プレゼンスキル含む)、③については研修教材に特化した作成スキルが必要です。⑤は①②が土台にあり、且つ④で講師がどういった方針のもと何を行なうかを把握していてこそ、クオリティが高まります。
誰がどの程度の業務配分で研修を運営するかは、ビジネスモデルや、研修案件ごとのコストによって変わります。例えば、もし研修講師がエージェンシー(研修会社)に所属して業務を行なう場合は、基本的には④のみ、または③④に集中できる仕組みが整っているはずです。ただその場合も、講師が専門領域以外について全く知見がなかったり「他人任せ」の状態であったりすることは、研修効果の上からは望ましくありません。①②⑤⑥の領域にも必要に応じ、「人財育成の有識者である講師だからこそできる提案や介入」を行なうことで、全体の質が高まります。「全体の質」とは、言い換えれば「お客さまに提供する商品の質」です。
講師を志す方がスキルを身につけていく段階では、取り組みの優先課題は④(または③④)にあるため、「講師養成講座」もそこに比重が置かれますが、品質の高い研修商品をお客さまにお届けするために、③④以外の部分にも知見を広げていただきたいものです。
【参考】
●エージェンシー(研修会社)を介さない講師業を志す方には、①~⑥すべてが初期段階に習得すべきスキルです。
●研修がビジネスである以上、個人事業・企業経営などの別に関係なく、またエージェンシーとの契約を行う・行わないに関わらず、①~⑥に加え経営感覚・経営知識(中でも中小・零細・ベンチャーの価値観に基づいた)やマーケティングスキルを磨くことが必要です。これまで会社員で、今後研修ビジネスによって独立をお考えの方は、経営経験のある方との交流を深めるなどし、学習を深めることをお勧めします。
3、「やってダメならやめればいい」は本当?
研修講師を目指し始める時、「もし講師としてやっていけなかったらまた他の道を考えればいい」といった楽観論を口にする方も、時折いらっしゃいます。確かに前向きな価値観です。「石橋を叩いて渡る」よりも「まずはやってみよう!」という意気ごみがあればこそ道を切り拓いていけるというのも、精神論としては頼もしいでしょう。
が、厳しく言えば、それは自分主体・自分視点でしか考えられていない姿でもあります。講師は、「自分が自信をもって伝えられることは何か」にも増して、「受講者さま(=お客さま)の何に対しどうお役に立つか」という顧客視点・顧客起点の考え方を優先させられる人であるべきです。「成功しても失敗しても自分のせい」というのは、その人の価値観だけの話であって、お客さまにもたらす便益・損失という視点が欠如しています。
「お客さま貢献」は講師としては無論、ビジネスパーソンとして“基本のき”です。お客さま(受講者さま)のキャリア形成、ひいては人生に大きな影響を与えるかもしれない存在が研修講師ですから、「貢献」を一義に考えるという根本姿勢は、掛け違えたくないものです。
もしも、毎回同じ講話を一方的に伝える講演会の講師としてならば、その講話によほど価値があれば、仕事の依頼が限定的に継続する可能性があります。しかし、研修時に受講者さまを観察したり対話を深めたりしながら個々の能力・考え等を見極め、引き出し、スキルを落とし込むような研修(※)は、講師がただ「自信をもって喋る」だけでは全く成り立ちません。傾聴力・対話力が不可欠ですし、その根本には、相手を尊び重んじて敬いながら関わりたいというマインドが必要です。
(※例えば接遇コミュニケーション研修がそれにあたります。受講者さまの「現有能力」と「目指すべき姿」を深く視野に入れ、トレーニングを導く力が必要です)
「やってダメならやめよう」という中途半端な意識以外にも、(これは非常に残念なことですが)「先生」と呼ばれる立場になることであたかも受講者さまの上に立つ存在であるかのように勘違いし、他者をどこか見下すそうな関わり方をしてしまって、結果的にビジネス上の信頼を失ったという例も、実際にあります。
どの道もそうであるように講師にも、新人から古参・ベテランまでいますが、講師の世界では「新人=アマチュア」ではあってはなりません。能力(意識・知識・スキル)に漏れ・抜けがある講師と出会う受講者さまは、率直に言うとたまったものではないでしょう。プロとして誠実・真剣に、受講者さまにとっての大切な時間に関わっていくためにも、根本的なところで、「やってダメならやめよう」という認識は持ちたくないのです。
このことからも、講師志願者の方が初期養成段階できちんとセッティングしておくべきマインドがあることを、押さえておきましょう。
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4、「自信をもって演台で喋る」は講師の職能のほんの一部である
講師が研修会場でどれだけ素晴らしく正確に、堂々と理論・正論・持論を述べることができたとしても、それだけでは研修の目的は果たされません。仮に受講者さまが熱心に耳を傾け、楽しく、時には感動すら覚えて講師の話を聞き、その場での満足度が高かったとしてもです。
受講者さまが受講後に、何らかの行動を変えてこそ(行動変容してこそ)、進歩や成果につながります。したがって研修の中では、受講者さまが意欲的に変化と成長の道筋を踏んでいくためのきっかけ作りが行われるべきで、それが果たされてこそ「受講して本質的に意味のある研修」です。研修は、「演劇を観に行って拍手喝采し、涙まで流しても、翌朝にはもうストーリーを忘れかけているようなあり方」とは真逆であるべきです。
明確に行動変容の効果が果たされる研修を開催するためには、研修企画(最低でも目的と目標設定、スタート・ゴール設定)が綿密になされていることや、講義・ワーク・演習を統合してどうインストラクション(進行)を導くかという設計が必要です。一方的に講師が喋るだけでなく、受講者さまからの発言や受講者さま同士の対話を促し、講師が計画をもってファシリテートすることで気づきを引き出すこと、模範を示すこと、模範の姿に受講者さまが意欲的かつ確実に近付けるようトレーニングを導くことなど、講師の役割は多岐に及びます。
また、当然ながら研修ごとに受講者さまの性質、レベル、会社の風土などが違いますので、都度、それらをよく把握することが求められます。
5、息の長い講師を目指して。アイシービーの講師養成講座で学べること
「研修講師になりたい」と思っている方が、ぜひその夢を実現させ、息の長い活躍をしていただきたいと、心から願います。アイシービーでは、講師養成講座(ビジネスマナー講師養成講座/接遇マナー講師養成講座)をご用意しています。基本カリキュラムについて、以下をご参照ください。
●ビジネスマナーインストラクター養成コース
●接遇マナー講師養成講座
(「クレーム応対」「電話コミュニケーション」「顧客コミュニケーション」「社内コミュニケーション」「接遇・電話応対品質向上コンサルティング」などマナー分野以外の講師養成をお考えの方も、是非ご相談ください)
上記の講座では、講師としての心構えや考え方、登壇にあたってのスキルやポイント、トレーニング効果の高い研修の導き方、受講者特性・ニーズ等に細かく寄り添った研修企画と設計、受講者とのコミュニケーション等について、集中的に学ぶことができます。講座を担当する講師自身のさまざまなエピソードにも触れながら、「違い将来、講師になって活動する」ということについて真剣に、かつ楽しみながら理解を深めることができます。
もちろん、座学だけでなく各種ワークや演習(模擬登壇など)を通し、講師としての疑似体験を得ることができます。「講師になること」を真剣に目指す方、「講師になれるかどうか」を知る手掛かりとして講座に出てみたい方、教養・見分を広げるために受講してみたいという方を、歓迎しています。
“少人数”や“お一人だけ”のご受講も可能です。その場合、講師志願の方がこれまで経験してこられたお仕事や積み重ねてこられたスキルに即して、内容をより細かくカスタマイズすることが可能です。例えば以下のようなご経験・スキルの違い、目指す道の違いなどに応じ、受講者さまごとの課題になるべく即した講座をご提供いたします。
●管理職経験がある方/ない方
●部下等の育成経験がある方/ない方
●ヒューマンリソース部門の職務経験がある方/ない方
●ビジネスマナー・接遇マナーについて基礎知識がある方/ない方
●講師業の開業を目指す方/開業ではなくご勤務先内での活動(社内講師)を目指す方
●ビジネスシーンでよく使われる課題解決フレームワークに慣れ親しんでいる方/そうでない方
●話すことが得意な方/苦手な方
●講演技術を主に学びたい方/コーチングスキルを主に学びたい方
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