ビジネス電話応対の技能を競う「電話応対コンクール」(主催:公益財団法人日本電信電話ユーザ協会)。地区予選と地区本選を経て、全国大会で勝者が決まるこのコンクールは、「電話応対の甲子園」とも呼ばれ、毎年多数の選手が熱戦を繰り広げます。
 今年2度目のチャレンジをする田中麻佑子(アイシービー社員)に、本番を前にした心境や、追い込みの取り組みなどを聞いてみました。
                                         (聞き手:鈴木恵・アイシービースタッフ)


田中麻佑子さん

 

鈴木
田中さんは今年2度目の挑戦ですね。去年、初めて挑戦した時の感想から教えてもらえますか?

田中
去年を振り返ると、「後悔」「残念」「不完全燃焼」に尽きます。トレーナーの竹内豊先生は、長年、応対コンクールの指導に当たっていらっしゃいますので、私の「応対の癖」「伸ばすべきスキル」「これを克服しないとコンクールに合格しない点」なども、レッスン初期から細かく教えてくださいました。でも去年、コンクールが終わって本番の録音を聞き返してみたところ、「直せていないまま、克服できていないまま」の箇所がいくつもあって・・・・・・。「結果も大切だが、自分にとって後悔のない競技にしてほしい」と先生から言われていたのに、後悔が残ってしまいました。

鈴木
後悔を後悔のままで終わらせないで、今年、再び挑戦するんですね。去年、克服しきれなかった点を、今年は重点的に取り組んでいらっしゃると思います。田中さんの弱点はなんですか?

田中
弱点は主に「声の表現力」です。言葉のつなぎ目や語尾の「て・に・を・は・で・ので・です・ます」のような部分で、音程が上がってしまう癖です。これは電話で話す相手に、「稚拙な印象」「子どもっぽい印象」を感じさせてしまうので、ビジネス電話応対では完全に不利ですよね。コンクールだけでなく普段の電話応対であっても、この話し癖は会社のイメージに関わることです。でも、この癖は結局克服しきれないまま、去年の本番で出てしまいました。
反対に、笑声をはじめとする「声に乗せる表情・感情」は、練習の甲斐あって克服できました。「応対の流れを把握すること」と、「どういう言葉で表現するか」という点についても、先生とかなり相談した上で練習を重ねたので、本番ではおおよそ仕上がっていたと思います。ビジネスパーソンとしての印象を落としてしまう言葉遣いも、だいぶ努力して直しました。

鈴木
私も去年、応対コンクールに挑戦したので(参考記事)、田中さんの苦労はよく分かります。田中さんは去年の「後悔」を通して、ご自分の課題をしっかり掴んでいるんですね。

田中
はい。去年よりも課題はクリアなので、取り組みはしやすいです。実はバレエを17年間やってきたので、舞台で何かを表現するということ自体は「好きなこと」だし、「慣れていること」でもあるんです。それに、応対コンクールという一つの目標に向かって、達成しようと努力する期間って、一日一日が充実するなって実感しています。例えば今年も、単純な応対練習だけでなくて、その元となる営業理論、言葉の選び方、話法など、たくさん勉強して、ここまで来ています。新しい何かを吸収して成長することって、楽しいですし、その楽しさが日常業務へのモチベーションにもつながっているなと思います。

鈴木
コンクール対策のトレーニングは、日常業務に活かせる要素がたくさんありますよね。

田中
はい。実は私の最近のキーワードは、「傾聴」なんです。常に「聞き上手」になろうと心がけています。普段のお仕事で接するお客さまに対して、もしも、「自分が何かを喋りたい」「案内したい」「弊社の商品(研修受講・資格取得など)を勧めたい」という気持ちが先立ってしまうと、きっと接客が表面的になってしまいます。例えば弊社に興味を持ってくださったお客さまと、初めて電話で会話させていただく時、「お客さまはなぜ興味を持ってくださったんだろう?」「今どういう状況にいらっしゃって、どういうお気持ちなのか?」という空気感みたいなものを、耳でよく察することがスタート地点です。その察したことに対して、「自分は何をすべきか」「何を話すべきか」を瞬時に判断して、ベストな応答ができるか・できないかで、お客さまのご満足は180度変わってきます。
コンクールに向けてのトレーニングは、ただ決まった通りにセリフを喋って演技すれば良いというものではなくて、コミュニ―ションスキルを学べます。普段の仕事に本当に応用できますし、もっと言えばプライベートでの人との関わりでも必ず役立ちます。「傾聴」って、普段のコミュニケーションでもすごく大切ですよね。
応対コンクールに、個人として、会社として挑戦して、出場することは大きな意味があります。でも、もしかするとそれよりも、舞台本番までに学べる事柄とか、それを実践して得られる体験のほうが、大きい意味があるかもしれないですね。
アイシービーでも電話応対コンクール対策研修を提供させていただいていますが、是非たくさんの業種・職種の方々に取り組んでほしいと思っています。

 

竹内講師と練習している田中さん

鈴木
本番まであと半月を切りましたね。今、追い込みで一番取り組んでいることは何ですか?

田中
スクリプトを抜け出すことです。「競技の持ち時間3分間をどういうセリフで構成したか」と、つい文字を思い出しながら考えて喋る癖が、出てしまっています。原点に返って、「電話の向こうにいらっしゃるお客さまと言葉のキャッチボールを交わすこと、会話すること」に意識をフォーカスして、自然な応対に仕上げていこうと頑張っています。

鈴木
今年もたくさんの選手の方たちが出場されると思います。その方々に対して、何か田中さんからメッセージがあればお願いします。

田中
今年の問題ですが、相手が“より”答えやすい質問の形、相手が“より”理解しやすい説明の形、つまり「話法を駆使すること」は、重要なポイントの一つではないかなと、私は考えています。その点をいろいろ工夫して応対練習を重ねています。他の選手の方はどういう流れで応対をされるのか、純粋に興味があります。またテクニックの使い方にも増して、今回の問題設定の中で選手お一人おひとりがどのようにお客さまに寄り添いを示されるかという、「その人にしかない応対」を、聞いてみたいなと思っています。

鈴木
ありがとうございました。応援しています!

◇◇◆ 担当トレーナー(竹内豊)からのメッセージ ◆◇◇◇◇◇
田中さんはアイシービーが運営するスクール「ICBI」で、生徒さまのコンサルタントとして非常に信頼されているスタッフです。生徒さま一人ひとりが、「何かを学びたい」と思われるに至った状況、環境、立場、お気持ちに、いつも丁寧に寄り添いつつ、ご自身も輝きながらはつらつとお仕事をされています。前職ではブライダルの現場を取り仕切る責任者としてキャリアを積まれてきた方です。接客サービス一筋に歩んで来た経験も、今の活躍の背景にあると、私は感じています。
 電話応対コンクールは普段の業務から離れた「舞台」で、技能が審査される機会です。コンクールは業務から離れた「舞台」でも、業務と無関係ではありません。人と人とが言葉を交わし合うことを通し、「心と心を通わせるコミュニケーションを交わす」という電話応対コンクールの特色は、田中さんが元々持っている強みが活かされる機会であり、スキルアップと成長が得られる機会です。
 今年のコンクール問題は、BtoBの電話応対です。応対者、お客さま、応対者の上司(または同僚)という三者が登場します。選手の田中さんは応対者として、今起きている状況の解決に取り組みます。お客さまからのお申し出が短いフレーズで発せられる中、応対者である自分が「何を把握して」「どう動くことが必要か」を「判断する力」が、まず問われます。また、適切・迅速かつ心を込めて問題の解決にあたっている姿勢が、顔が見えないコミュニケーションである電話を通し、お客さまにしっかり伝えられる「表現力」が重要です。
 仮に、お客さまに貢献したいという心構えがいくら十分に確立されていても、表現力がなければ伝わりません。逆に、巧みに器用に演じられるテクニックを持っていても、土台に「心」が伴っていなければ、それは「案件の処理」に過ぎません。田中さんの普段の誠実なお仕事ぶりを拝見しているだけに、今年の舞台では一層「田中さんらしさ」を出して、あたたかい応対を実現していただきたいと期待しています。
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【参考】(項目をクリックすると別ページに遷移します)
アイシービーの「電話応対コンクール対策研修」について
コラム「電話応対コンクール 優勝までの道を共にして」
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