こんにちは。企業研修講師の竹内豊です。
 2022
年度電話応対コンクールの競技問題が発表されました。電話応対コンクールは日本電信電話ユーザ協会が主催するビジネス電話応対の競技で、約60年の歴史を持っています。全国から1万人前後の選手が予選を経て本線に出場し、3分間の持ち時間で電話応対技能を競う大会です。
 「電話応対の甲子園」とも呼ばれるコンクール。これに参加する意義は、選手本人にとっても組織(企業・官公庁・自治体等)にとっても、計り知れない大きさがあります。今年度はどのような競技が行われるのでしょうか。また、どのように準備を重ねれば良いのでしょうか。ご一緒に考えていきましょう。

◇◇◆ 目 次 ◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇

  1. 2022年度の競技問題
  2. 競技のポイント
  3. 今年の問題「こういう人に向いている!
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 まずは、電信電話ユーザ協会から発表された問題を、よく確認しましょう。(2022年度電話応対コンクール問題
 今年の問題は、BtoB(企業対企業)の設定で行われる電話応対です。電話応対コンクールでは例年、個人のお客さまが企業に問合せの電話をかけ、企業側の担当者が受け答えをするBtoC応対(企業対個人顧客)が、競技問題として多く選ばれます。今年の問題では、電話で初めに会話する相手は取引先です。電話を受ける担当者は、相手と直接の面識はないという設定です。
 面識がないからと言って、用件を右から左に「処理」するような事務的対応では信頼に欠け、大切な取引関係に支障をきたしてしまいます。会社の一員として責任を持っていることが伝わる応対であること、かつ正確にご用件を承り、的確に物事を前に進めていくコミュニケーション能力が問われる競技です。
 
 取引先との会話でいったん通話は終了します。その後、応対者はすぐに自社のメンバーに電話をし、用件を伝達します。加えて、応対者は自社メンバーから別件の質問を受け、回答するという流れです。

 たった3分の短い時間で、複数の用件に対処する競技です。会話の登場人物は3人だけですが、交わされる会話の背後にはたくさんの関係者・利用者が存在します。
 会話コミュニケーションの成否が、多くの人の今後を左右します。応対者は、複数の人が意思・情報を伝達しあう中でキーパーソンの役割を果たします。コミュニケーションがいかに効率的・有機的であるかが、ビジネスの進展をも左右します。
 今年の競技には、基本的な電話応対マナーだけを知っているだけでは成り立たない深いテーマと意味が込められていると言えるでしょう。とても取り組み甲斐のある内容です。

 電話応対コンクールは、単なる発表会ではなく競技です。明確に「勝つ」ということに焦点を当てて競技に臨む選手もいれば、他の意義・目的を持って臨む選手もいます。それぞれが目指すゴールは多様であって良いのです。ただ、競技が終わった後、「悔いがない」という状態にするためには、競技問題にしっかり取り組める準備時間を取ること、十分なトレーニングを積んだうえで本番を迎えることが大切です。(「もっときちんと練習できたはずだった」は、残念ながら例年の競技終了後、多くの選手から聞かれる「後悔」です)

 4月の問題発表から各地区予選出場までには、4~6か月程度の期間があります。この期間を有意義に使いましょう。「①競技問題の応対者である『吉田和希』に成りきるために、どのようなマインドを持つべきか」「②株式会社ユーザトラベル(会議・研修・各種催事を企画運営する特色を持つ旅行会社)の支店の一員であり、社員同士が連携しながら成果を出す立場にいる者として、どのような知識を有しているべきか」「③今回の電話応対で必要な技能を知り、かつ発揮できるか」の3つの軸を常にぶらさず、練習を重ねていくことが重要です。

 さて、今年の競技では3分間で2つの通話が行われます。前半は取引先である「株式会社アクセス商事総務課長・鈴木真澄様」からかかってきた電話の応対、後半は自社(株式会社ユーザトラベル)の「木戸真係長」にかける電話です(※)。前半・後半の2部構成と捉え、それぞれのポイントを整理しましょう。
(※誰を指名する電話であるかは、各地区大会・全国大会で変わる可能性があります)

【前半部(アクセス商事・鈴木様との会話】
①応対者(吉田)は鈴木様と面識がない設定。個人的な面識の有無に関わらず、アクセス商事との取引関係を踏まえ、ご愛顧に感謝する気持ちで応対すること。
②自社(ユーザトラベル)の顧客に商品を提供するために、自社と他業者間にもさまざまな取引が発生している商流を、よく理解すること。それらの業者とユーザトラベルは、いわば一つの目標を達成するためのチームであり、協働なくして成果を上げることはできない。互いに連携して各々の責任領域を果たすことで顧客満足を創出し、ビジネス成果を上げているという視点を持つこと。
③応対者(吉田)は、普段は他プロジェクトの営業要員として業務にあたっている。が、ユーザトラベルの一員として、担当案件以外にも当事者責任意識を持っていることが大切である。自社ビジネスの損失になることは避け、利益を生むことに、常に行動の矛先が向いている姿勢が、当然電話応対にも表れる。「他人事」「無責任」「事務的」と感じられる対処は論外。また、ただの「伝書鳩」であってはならない。鈴木様の用件主旨、ニーズ、何かのことが果たされるメリットと果たされないデメリットなどを、鈴木様が発する短い言葉の中から汲み取る「察知力」「洞察力」「思考力」「判断力」「行動力」が求められる。
④お客様情報の中で、「お客様名」「指名の担当者(誰宛の電話か)」「用件」等は、各地区大会や全国大会で変わる可能性がある。協会側からのアナウンスを、都度よく確認すること。
⑤相手の大切な時間を無駄にさせない会話の導きが求められる。相手から発せられた情報をしっかりと聴き取って理解するのは無論、応対者自身が相手の状況・心情等を受けとめていることを相手にも伝え、安心感・信頼感をもたらすこと。「本当に分かってくれているのかな?」と相手に思われてしまってはいけない。
⑥相手がどう返答すればよいか迷うような質問もタブー。質問の意図を明確にすること、かつ相手が応答しやすいよう言葉(話法)を選んで質問すること。
⑦迅速・的確に、相手と自社メイン担当者との打ち合わせ可能時間などの提案を行うこと。なお通常の電話応対では、相手に失礼のないよう留意しながら一定時間の保留を行うことも可だが、競技では、問題にある情報(営業担当スケジュール・予定イベント一覧)をできる限り把握しておくこと。

【後半部(自社内の担当者との会話】
①単なる電話番として取引先からの用件を申し送るのではなく、同じ企業組織で利益貢献している者同士=成果を生み出すチームメンバー同士としての役割意識を明確に持って、会社の数字を守る・作るためのコミュニケーションを行うこと。
②前半での会話(相手から言われたこと・自分が伝えたこと)を、漏れなく正確に伝達すること。(伝達が不完全であることのリスクをよく把握していることが前提)
③担当者から別件で言われる質問にも迅速・正確に回答できるよう、少なくともイベントの開催予定と集客状況を把握しておくこと。(競技中に、迷いながらモタモタと資料を確認することがないようにする)

 繰り返しますが、競技時間は3分間のみです。「あれを言いたい、これも言いたい」と思いつくまま言葉を発していくと、3分間では収まらず、時間超過になってしまいます。「必ず言うべきこと」「言っても言わなくてもいいこと」「言わない方がいいこと」「言ってはいけないこと」をよく整理して、会話を導けるようにしましょう。

 

 電話応対コンクールへの挑戦、まして初めての挑戦ともなれば、まず「出てみよう」と思えるまでにも、それなりの心理的ハードルがあるかもしれません。しかし、そのハードルを乗り越えて出場した先には、応対者個人にも組織にも、大きなメリットがあります。(当社アイシービーでも過去に多数の選手がコンクールにチャレンジし、それぞれの体験談を綴っています。/体験談① 体験談②

 今年の問題傾向・特徴を踏まえると、以下のような方にはぜひ挑戦していただきたいと願います。

 ●ビジネス電話応対の基礎を踏まえ、応用的な内容を学びたい方
 ●名ばかりではない本質的な「ホウレンソウ」を実践するコミュニケーションを、電話という舞台で学びたい方
 ●チームメンバーが各々の責任を果たし合い、共に成果を上げる「チームビルディング」のあり方を、電話コミュニケーションの側面から学びたい方
 ●ビジネス電話の応対技能を、普段の仕事から離れたケースを通して学びたい方
 ●「言葉」「声」の勝負である電話応対のステージで自分を表現したい方、自分磨きをしたい方、スキルを伸ばしたい方

アイシービーでは電話応対コンクールに出場する皆さまのトレーニングサポートを、長年にわたり行っています。
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